歴史的建造物の保存と活用

  • 研究要旨

都心における歴史的建造物は都市開発の阻害要因とみなされ、特に1970~80年代に多くが破壊されてきました。一方で都市間競争が激しくなっている今日、周辺の都市とどのように差別化を図るかは大きな課題とされています。
例えば日本橋は明治維新以降長く日本の経済、商業の中心地として栄えてきましたが、六本木や新宿といった都市の発展により、その影響力は小さくなっていました。多くの容積を確保するため高層ビルへの建て替えが叫ばれていた中、あえて既存の建物を残し、歴史的な景観の形成を武器に差別化を図ったのが三井本館です。建物を保存する代わりに隣接する新築ビルの容積を割増し、歴史的建造物の保存と開発行為の両立を実現しました。三井本館を皮切りに日本橋では既存の建物を活用した開発が多く進められ、今ではオフィスワーカーや買い物客で、再び活気ある街となっています。
このような事業を行うには、制度、予算、利害関係といったものから、意匠、構造といった建築的な観点での検討も必要です。まだ事例が少ない歴史的建造物の活用について、様々な観点から検証しています。

  • キーワード

文化財保護法
近代建築
容積率